過去は過去でも

2/16
前へ
/500ページ
次へ
春が投げ掛けた疑問により 部屋はシンと静まり返った。 総司も春も 土方をひたと見つめて 返事をひたすら待っている。 「はぁぁぁぁ~。」 大きくため息をついて 沈黙を破ったのは土方だ。 「なんっつー鋭い女だ…。 気づかなくて いいことまで気づきやがる」 「副長…。」 「あぁそうさ。調べたさ。 そしてお前らに行き着いた。 もう2週間ほど前にな。」 「ならどうして すぐ会いに来なかったんです? 土方さん、そーゆーの 我慢できない人でしょ」 総司が首をかしげる。 土方はあどけない表情の総司を キッと睨む。 「ッそれはお前が…!」 「私が??」 「総司が?なんなんですか?」 総司と春が問う。 土方はうつむき黙ってしまった。 耳まで赤くなっている。 「お前が…。また笑ってて、 健康そうに剣を持ってるから。」 土方の肩が震える。 (泣いてる!?) 春はハッとする。 「また会えるなんて 思ってもなかった。 江戸時代じゃぁ9つの頃から 面倒見てきたんだ… そいつが段々痩せ細って でも何もしてやれなくて、 心配で心配で、そのくせ 最期を看取ってやることも…。 なのにどの面下げて 会えってんだ!!」 (あぁ…。そうか。 この人は病にかかって 衰えていく総司を見てるんだ。) 春は胸が苦しくなる。 「土方さん…。」 総司がそっと土方の手をとる。 「だから嫌だったんだよ! 泣いちまいそうだったから!」 フンッと土方はそっぽを向く。 涙を見せまいとしているのだろう
/500ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4574人が本棚に入れています
本棚に追加