過去は過去でも

7/16
前へ
/500ページ
次へ
土方に戻ってこないかと 春も総司も電話をかけてみたが 留守電設定されていて繋がらない 「じゃぁ今晩は 予定通り2人で過ごしますか」 総司が息をつきながら言う。 「そうですねー。」 春も頷いた。 「一応メール送っときます。」 総司は土方のアドレスを 携帯に打ち込んだ。 それから2人は 市中を散策し 夜は四条で飲んで帰ることにした ドリンクのメニューを見ながら 総司が春を気遣う。 「春は入学したてだからあんまり お酒飲んだことないでしょう? 飲みやすい…」 「あ、いえビールで!!」 メニューを閉じながら即答する春。 「へ?」 総司は笑顔のまま固まる。 「文学部の新歓のときに 色々飲んでみたんですけど 食事中に甘い飲み物飲むの駄目で ビールが一番美味しかったんです」 可愛らしい笑顔を返す春。 「色気ゼロですねぇ。 あなた酒飲みになりますよ」 総司は苦笑いだ。 「え!!ビールって 色気ないんですか!? 日本人のサラリーマンは “とりあえず生で” じゃないんですか!?」 「あなたサラリーマンじゃないでしょう」 総司は春の 妙な思い込みに爆笑する。 「え~。じゃぁどうしよう。 他の誰に色気ないと 思われても良いけど 総司にはあんまり 思われたくないからなぁ」 春はもう一度メニューを広げながら つい心の声をだだ漏れにしている その顔は真剣そのものだ。 総司は照れながら 「春はそのままで良いんですよ」 と、メニューを春の手から抜き取り 店員を呼び止めると 生を2つ注文した。 「…ありがと///」 春が小さな声で礼を言う。 (やっぱり土方さんに 邪魔してもらった方が 良かったかもしれない…) 春の可愛さに当てられた総司は そんなことを思った。 そのとき携帯のバイブが震える。 「土方さんからかな。」 総司は受信箱を開いた。
/500ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4574人が本棚に入れています
本棚に追加