過去は過去でも

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「そう、じ…??」 一瞬でも総司の存在への 不安を抱いたことが 伝わってしまったのか。 春は心配になった。 総司の頭がトサリと 春の肩に落ちる。 すー。すー。 それから微かに聞こえる 規則正しい息づかい。 「へ?」 春はすぐ傍の総司の顔を見た。 目を閉じて 幸せそうな顔をして眠っている。 「やっぱり 酔い覚めてなかったんだ…」 呆れると同時に どこかホッとしてしまう。 あのままあの時間が続けば 今日の春は総司を 拒んでしまっていただろう。 (どうして…) 春は眠りこけている 総司の寝顔を眺めた。 まぎれもなく総司だ。 間違う筈がない。 幕末の頃と変わらない 春の愛しい人… それなのに… (さっきの妙な感覚は何?) 春はソッと総司の体に手を伸ばす。 抱き締めて、目を閉じた。 細いながらも筋ばった体の線。 柔らかな優しいにおい。 絶対に間違いなく“総司”だ。 (もう、あんなこと 思わないようにしなきゃ。 あたしはこれからずっと この時代で総司と 生きていくんだから…) 春は先ほどの不安を 打ち消すように 頭を軽く降って 総司の腕の中に体を埋めた。
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