袖擦り合うも

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「で、一体何が気がかりで その不安は生まれてるんだ?」 土方が話を切り出す。 春はムービーのことを 詳しく説明した。 「そうだったのか…」 春が話し終えると 土方は心底驚いたような顔をした (いよいよこいつらの仲に 割って入ることはできねぇな…) 土方は改めて 2人の結びつきの強さを実感する 総司が死に際にまで 春を思っており 時代を越えてまで 思いを伝えていたことは 土方は初めて聞く話だったからだ 「このムービーを 思念だと考えると 思念総司は 実体に入ったはずなのに 消えないまま残ってるのは 変じゃないですか?」 春が整った顔の 眉間にしわを寄せて 考え込んでいる。 土方は腕組みして しばらく上を見上げた。 そして、口を開く。 「お前の気持ちじゃねぇのか?」 「あたしの…気持ち??」 春は顔を勢いよくあげる。 「お前、こっちに戻ってから そのムービーを心の拠り所? みたいな感じにしてただろ?」 「は…い。」 土方の言う通りだった。 平成で総司に再会するまで 毎日夜眠る前に ムービーを見るのが 春の日課だったのだ。 「消したくねぇ。 幕末の総司は総司として 残しておきてぇって考えてるのは お前の方かもな。」 春の心臓がドクンッと波打った。 自分でも気づかなかった心理。 (あぁ。そうだ…。) 春の肩が震えた。
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