袖擦り合うも

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「とにかく美姫に後で 詳しく話聞いてみます」 2人の言い争いを止める様に 春は苦笑いでため息をついた。 「は!その女も たいがいトボけてるな。」 土方が腕を組んで言う。 “強面”と言われたことを 根に持っているのだろう。 「橘さんも、 春の事をすごく大事に 思ってるからこその 早とちりですよ。」 総司がニッコリと微笑んだ。 そして真面目な顔に戻り、 「ところで、春はそんな事で 悩んでたんですね。」 話が本題に戻り 春はピクリと体を震わした。 「ご、ごめんなさい…」 小さな声で謝る。 「なんで謝るんです。」 総司が不思議そうな顔をする。 「え??」 総司の事を完璧に 受け入れられた訳ではないことを 春は謝ったつもりだった。 「私の事を幕末と 分けて考えてしまうってのは 別に怒りませんよ。 もっともだと思いますし。 ただ…」 と、総司は寂しげな顔になった。 「そんな大事な話を 私には黙ったままで 土方さんに相談しようとしたのは 少し腹が立ちますねぇ」 「!!」 春はようやく それがどれほど総司を 傷つけたか気づいた。 「おぃ、総司…。こいつは…」 土方が口を開くが 「分かってます。 私を心配させたくなかった 不安にさせたくなかった って言うんでしょう?」 総司が静かに続ける。 土方は口を閉じた。 春は俯いたままだ。 「あなたは昔から 回りに気を使って 心配事を抱え込む癖がありますね あれほど1人で 泣くなと言ったのに…」 総司が幕末で 過呼吸になった春に言った言葉だ 春は自分を責めて 暗い気持ちになる。 そんな春を見て 総司は大きく息を吐いた。 「でも土方さんみたいに 相談できる人ができたのは 良いことなんでしょう。」 優しい声音に春は顔をあげる。 「すいません。ヤキモチです。 春は私を思って 黙っていてくれたんですから。 それから…。」 総司は土方の方を見て頭を下げる 「土方さんも、ありがとう。 さっき春に言ってくれてた言葉 馬鹿にしたけど、 本当は凄く嬉しかったです。」 「ぁ、お、おう。 分かれば良いんだ。」 いきなりの総司の素直な言葉に 土方は照れて噛みまくりだ。
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