袖擦り合うも

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「ありがとうございました。」 春と総司は 土方の車から降りて頭を下げた。 大学まで送ってもらったのだ。 「今度は飯でも奢ってやるよ」 「土方さん太っ腹~♪」 総司が嬉しそうに笑う。 「社会人だからな。 学生のお前らとは違うさ。」 「また連絡しますね。」 春もさっぱりした顔で 土方に言った。 「なんかあったら いつでも連絡して来いよ。」 土方はニコニコ笑う総司と春を見て (手のかかる 弟と妹ができたもんだ。) と、思いながら笑い返した。 「それじゃぁな」 土方が車の窓を閉めようとした時 「春!!沖田先輩!!」 と、大きなよく通る声が聞こえて 美姫が傍に駆け寄ってきた。 「大丈夫!?てか誰!? 知り合いだったの!?」 美姫は春の肩を掴みながら 土方の姿を認めて 矢継ぎ早に聞いてくる。 土方は帰るに帰れず ポカンと美姫を見ていた。 「ちょ!美姫、落ち着いて!」 「橘さん。この方は 私と春の共通の友人なんですよ」 総司が苦笑いで 美姫を春からひき離した。 「ゆうじん…??」 美姫が青い顔をゆっくりと 土方に向ける。 土方は無言で何度も頷いた。 「なっんだぁ…よかったぁ…」 ようやく事態が 飲み込めた美姫は脱力する。 「あんたが男の人の車に 簡単に乗るわけないし、 何か脅迫とかされてたのかと… そうか、沖田先輩との…」 「すいません。心配性なんです」 春は土方に向かって 困ったように笑った。 「いや、別にいいけどよ。」 土方がそう返事をした途端、 美姫が弾かれたように顔をあげた 食い入る様に土方を見ている。 「??…美姫??」 「あ!ううん!なんでもない。 こちらこそすいません! 春とは幼馴染みなので 気にかけすぎちゃう所が あるんです。」 美姫は土方に頭を下げる。
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