袖擦り合うも

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「かまいませんよ。」 土方がニコリと笑った。 外面スマイルだ。 美姫はその笑顔を見て ポーッとなっている。 (美姫??) 春は赤くなっている美姫の顔を チラリと盗み見た。 「じゃぁな。 春、総司。美姫さん。」 土方は軽く手をあげて 今度こそ車を発進させる。 車が見えなくなり、 その場に3人が残されてから 美姫が口を開いた。 「春…私一目惚れしたかも。」 「えぇぇ!?」 春は声をあげた。 総司も春の隣でギョッとしている。 「いや、あの人は 外面は気さくな感じでも 結構ぶっきらぼうというか…」 「声…。」 春の忠告を無視して 美姫がポツリと呟いた。 「声?」 総司が思わず聞き返す。 「あたし、あんな良い声 聞いたことがない…」 春も総司も唖然とする。 つまり美姫は 顔よりも何よりも 声に一聞き惚れしたと言うことだ 「春!お願い! あの人紹介して!!」 美姫が春に手を合わせて頼んだ。 袖擦り合うも他生の縁。 運命の不思議さを 春はそんな美姫を見ながら 呆然と実感した。
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