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視界がスローモーションのように遅くなり、眼前に餓鬼がいる。
私は最悪の一撃に覚悟をする。
その刹那―――
「!? ギャギョ!?」
耳に鋭いノイズが走り、目の前がグニャリと歪むと、次の瞬間には、目の前の餓鬼もろとも周囲の餓鬼が弾け飛び、黒煙に変わる。
「くっ……なにが…」
視界が元の処理スピードに戻り、緊張が緩んで膝が折れる。
私は自分の置かれた状況を確認すると、目の前に空間の歪みがあり、それが元に戻ると目の前にはよく知る制服を着た少年が立っていた。
「!? 誰っ!?」
折れた膝に力をこめ、私は軽く飛翔すると、少年と距離をとる。
「……」
が、少年は私の声が聞こえていないのか、首だけを左右に動かすと、辺りを確認しているようだった。
「ちょっと聞いてるのっ!」
もう一度怒鳴るように発した言葉に気づいたのか、少年はゆっくりと私の方に顔を向けた。
……漆黒の瞳。
生気を感じさせない瞳は私の瞳を捉える。背中に寒気が走るのを感じた。
「……ここは…どこなんだ?」
少年が私に問う。
「私の質問に答えなさいっ!」
双爪を少年のほうに向け、私は叫ぶ。
この空間になぜ同じ学校の生徒がいるの?
そんな私の鬼気迫る勢いが通じたのか、少年は口を開こうとしたが、その時少年の背後に餓鬼が迫る。
「!? 後ろ!」
とっさに叫んだ声に反応し、少年は振り返る。
が、時すでに遅く、突進してきた餓鬼に少年の身体は宙を舞い、鳥居に激突すると、砂煙に姿を消した。
「楓っ! 無事かっ!?」
駆けつけた一狼が、放心状態の私を抱えて飛翔し、離れた鳥居に着地する。
「一狼! 一般人がっ!」
「あんだって!? ここに一般人がこれるわけ……」
「いるのよ! 私だって信じられないわよっ! 」
私は砂煙が舞うほうを指差す。その砂煙に導かれるように餓鬼も集まりだしている。
「とにかく助けないと!」
「あ、おおう。……けど、あの有様じゃ望みは薄いけどな…」
一狼の言葉に唇を噛み、私が向かおうとした矢先、轟音が響いたと思うと、大地が揺れた。
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