*一隣*

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「やっぱりさぁ~、楓も一回は男の人とつきあった方がいいって!」 生徒が入り乱れる購買部で、私に友達が突然囁く。 「!? ちょ、ちょっと何よいきなりっ!? こんな所で話す事じゃないでしょっ!」 いきなりの事に、私は前方にいた男子生徒に意図せず裏拳をかましてしまう。崩れるように地面にヒザをつき、振り返った彼は私を涙目で睨む。  私はそんな彼に平謝りすると、そそくさと昼食を購入し、友達も買ったのを確認すると、足早にその場を去った。 「もぅ、あんな事言うから散々よっ!」 少し冷えた風が吹く屋上で私は友達に恨み言を呟く。 「だって、楓は男子から結構人気があるのよ? 入学当初から告白されまくってたじゃない?」 クロワッサンを片手に、収まる事を知らないニヤケ顔で私に詰め寄る。 「だって、いきなり告白されてもどんな人かも分からないし……大体、私は俗に言うイケメンには興味ないのっ!」 「えっ!? まさかB専―――」 「違うっっ!!」 思わずクリームパンを握り締めてしまい、中身が飛び出る。 「!? もぅ……」 「あらら。じゃあ、あの噂はガセだったのかしら?」 「? 何よ?」 唇を指でなぞりながら何かを思い返すような素振りを見せる友達。 「……琴山君よ」 「はぁ~? 琴山? 一狼の事??」 知った名前が登場し、私は首を傾げる。 「そうそう。あなた琴山君と仲いいじゃない? だから付き合ってんじゃないか? って噂がねっ」 「バカ言わないでよっ! 何で私があんなのと―――」 「おいおい、あんなのとは……ヒドイんでねぇ~の?」 「!?」 後ろから声が聞こえ、振り向くと、そこには話の張本人が屋上のドアに寄りかかって笑っている。
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