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「もぅ、やりすぎよっ! 汚れはしないけど、何か制服につくのは嫌っ!」
黒煙となって消えはしたけど、制服に付着した個所を手で払う。
払いながら向けた視線の先では、一狼が大立ち回りをしながらトンファーを高速回転させ、餓鬼をなぎ払っている。
(出遅れたわね……私だってっ!)
両手を前に突き出し私は自分の使うべき得物をイメージする。
『……双爪(そうそう)っ!!』
掌の辺りの空間がグラッと歪み、治まると、私の背丈より少し長い、細い鉄の棒が現れる。
その両端にはフォークのような三つの鋭利な刃が夕闇に光っている。
「行くわよぉっー!」
姿勢を落とし、地面を蹴ると、一気にトップスピードまで加速する。
そのままの勢いで餓鬼の群れに突入した私は構えた双爪を勢いよく真横に滑らせる。
少し間をおいて起きた風と共に、周囲の餓鬼の身体が二つに分離し、黒煙へと変り、刃を逃れた餓鬼も風に吹き飛ばされ、辺りの鳥居に身体を埋めた。
「ふぅ、いい感じね」
「ふぅ、いい感じっ♪ じゃねぇっ!!」
初弾の心地よい感覚に浸っていると、怒号が響く。声のほうに顔を向けると、地面に倒れた一狼が叫んでいた。
「お前っ…俺まで真っ二つにする気かっ!?」
「あ~ら、これはこれは。私に化け物の残骸の雨を降らせてくれた一狼クンじゃありませんか?」
「……明らかに根に持ってんな」
「キィギャ…」
はっと、甲高い声に私達は姿勢を直す。周りにはいまだ大量の餓鬼がひしめきながら奇声をはっしている。
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