プロローグ~ドラフト会議~

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さらに自分がプロ野球選手になったということを実感させる出来事が起きた。 仮契約を交わした部屋に一人の男が入ってきたのだが、その男のことを私は知っていた。 吉村 三郎(よしむら さぶろう)。 森ノ宮ホーネッツの主力選手であり、一年目でいきなり首位打者争いに顔を出すなどして新人王を獲得した有名選手だ。 そんな人物が目の前にいる。 それだけでも驚きなのに、彼は私に話し掛けてきた。 「はじめまして。俺は吉村って言うんだ。知ってるかな?実は同い年がいなくてずっと肩身が狭くてさ。やっと同い年の奴が入ってくれてマジで嬉しいんだよ。仲良くしような。俺のことはヨッシーでもサブでもいいや」 吉村は親しげに手を差し出してきた。 私はただコクりと頷いてその手を握り返すことしか出来なかった。 「だからさ。さっさと一軍に来いよ。一緒に一軍でプレーしようぜ。待ってるからな」 吉村はそう言うと慌ただしく部屋を出ていった。 有名選手から話し掛けてもらえた。 この時ようやく私は森ノ宮ホーネッツの選手になったんだなと実感できた。 プロ入り後はなかなか上手く行かずに何回も挫けそうになった。 だがそのたびに吉村の『一緒に一軍でプレーしようぜ』の言葉を胸に堪えた。 そして現在。 私はエースとして君臨している。 もちろん空ではなく、マウンド上のエースとして…。
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