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「おう高チャン、試合はどんな感じだ?」
「二点差でリードしてます」
今、私のことを「高チャン」と呼んだ先客の名前は滝沢 宏昭(たきざわ ひろあき)
私の先輩である。
今年で40歳になるがまだ老け込む気配はない。
技巧派サウスポーと言ったらまずこの人の名前が挙がるだろう。
彼の持味はなんといっても針の穴に通すようなコントロールと熟練した投球術である。
そのため球速は130㌔出るか出ないかであるが相手を見事に翻弄する。
滝沢さんが立て続けに聞いてきた。
「先発の堅はどうだ?」
「いまいちパッとしないですね……」
私がお茶を濁すような答え方をしたところでブルペンの電話が鳴った。
「なるほど。それじゃあ行ってくるよ」
滝沢さんはそう言ってブルペンを後にした。
直後にウグイス嬢のアナウンスが入る。
『ホーネッツ、ピッチャーの交替をお知らせします。ピッチャー、小島に代わりまして、滝沢、背番号44』
同時に「ワァー」という歓声が聞こえてくる。
人気も衰えてないんだよなとしみじみ思った。
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