プロローグ~ドラフト会議~

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《……ただいまよりプロ野球、選手選択会議を開始します》 女性アナウンサーの声がテレビから聞こえてきた。 私の名前は高田 雄太(たかた ゆうた) どこにでもいるごく普通の22歳の男だと自負している。 他人と比べて変わっている点を無理に挙げるとしたら、通ってる大学が防衛大学校だということぐらいだ。 さて、それは別にいいのだが――。 「中村先生。ホントに恥ずかしいんでやめてもらえないでしょうか」 私は目の前にいる年配の男、中村先生に懇願するように言った。 本来であれば今は講義の途中なのだが、どこからか持ってきたテレビで堂々とドラフト会議を流している。 ……まあ、原因は私なのだが。 「謙遜すんなよ!お前の進路が今ここで決まるかもしれないんだぜ!」 隣にいる私の親友の大田 大五郎(おおた だいごろう) がバシバシと背中を叩いてきた。 私はこの騒動の発端となった数週間前のことを思い出した。 数週間前の帰り道、いきなりプロ野球チームのスカウトに声をかけられたのだ。 用件はプロ野球志望届けを出してほしいということであった。 ……まあ客観的に見て、私の実力など保険、それも下位レベルの保険だろう。
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