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「スミマセン。ちょっとトイレに行ってきます」
私はそう言ってトイレへと駆け込んだ。
個室の中に入り、鍵を締めた。
ポケットから携帯電話を取出し、自宅へと連絡する。
このゴタゴタで肝心の親に連絡できていなかったのだ。
『もしもし』
聞こえてきた声は弟の雄斗であった。
「もしもし、雄太だ。お袋か親父いるか?」
『いないよ。母さんは「今夜はご馳走にしなきゃ!」とか言って買い物に行っちゃったよ。父さんも今日のフライト投げ出して帰ってきてるらしいけど今はまだいないや』
う~ん、いないのかよ。
つーか親父は仕事を投げ出したの?
ロサンゼルスにフライトじゃなかったか?
『あっ、父さんの件は大丈夫だよ。後輩に押しつけたって言ってたから』
そんなのでいいのか。
私は深いため息を吐いた。
とにかくお袋も親父もいない。
だったらこれ以上電話してても無駄だな。
私は電話を切り、トイレを後にした。
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