FILE1 こだわりなら仕方ない

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その部屋は分厚いものや薄いもの、新しいものから古いもの、ありとあらゆる書物が至るところに積み上げられたり無造作に置いてあったりしている、足の踏み場もなさそうな部屋だった。 そんな部屋の中でひとり、茶髪を高く結い上げた女性が、片手に本を持ち、読書をしながら紅茶を啜っていた。 歳は少女とは言えなさそうだが、成人しているとも思えず、やや釣り上がった瞳が強気そうな印象だった。 ……と、不意に部屋にチャイムの音が響いた。 女は本とカップを置き立ち上がると、確認もせずドアを開けた。 「こんにちは、真鈴」 そこに立っていたのは金髪の少女だった。 風貌は幼く、女―――真鈴とは対照的にやや垂れたオーシャンブルーの瞳が穏やかそうで、ややだぶついているトレンチコートが妙に可愛らしかった。 「ん、ごきげんよー、紗愛」 「ドアを開ける前には確認しなきゃだめだよ」 「いいのいいの、どうせ来客なんてたまにしかないから」 それより立ち話もなんだから、入って入ってと、真鈴は紗愛を部屋に招き入れた。 先ほどまで本を読んでいた机を適当に片付け、椅子を運んできて紅茶をだす。 一連をさらりと行い―――部屋がより汚くなったのはご愛嬌だ―――、お互い椅子に座ると、真鈴が先に口を開いた。 「また―――鹿公園?」
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