FILE1 こだわりなら仕方ない

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少しの間を置いてから、紗愛はゆっくり頷いた。 「……うん、その通り」 そしておもむろに掛けていたポーチから一枚のカードを取り出した。 黒を基調に、右隅に深紅の子鹿があしらわれたそれは、鹿公園のシンボルとも言えるものだった。 「明後日の午前零時、シェイエス氏のお宅にある『シュヴァリエ・パール』を頂戴しに上がります。―――鹿公園・苑仄。」 「で、あたしに警備の依頼、と」 「うん」 紗愛はにっこり笑って続けた。 「鹿公園自体は悪い組織じゃないんだよね。この間だって、僕たちが手を焼いてた詐欺集団を壊滅させてくれたし。  ただ……こっちにもね、メンツ、ってものがあるんだよ。」 「そりゃあねぇ。ま、あんた個人はパッと見とても警察には見えないから、メンツも何も無い気がするけど」 「それはお互い様でしょ。真鈴だってこんな部屋じゃいいとこ読書オタクだよ、絶対探偵なんて分からないよ」 「あー、そっちが本職、探偵副職だから」 とは言いながら、真鈴は鹿公園の予告状を手に取って、それを真剣に見つめはじめた。 紗愛の方も目を閉じ、今回の予告について考えを巡らせ始めているようだった。 五分後、真鈴は予告状から顔を上げ急に立ち上がった。 「……よっし、じゃあぼちぼち捜査に行きますか」 ……そう告げてみたものの、紗愛からの返事はない。 「……紗愛?」 「…………」 見れば、紗愛は未だ目を瞑り自分の考えをまとめているようだっt……… 「………zzz」 ……否。 寝ていた。 「ちょwwwおまwwwひどいよ紗愛サンwww」 「………………んー?何か言った?」 「いや、寝るなしwww」 「………………うん、分かったから後は真鈴一人でヨロシク、僕連日の捜査で疲れちゃった☆」 「ちゃった☆ じゃねーよちゃんと一緒に捜査しようね紗愛さ……あのー?紗愛サぁぁン!?応答せよ!紗愛!!紗愛様アアアァァァァ!!」 神さま、私たち宝守れそうにありません。
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