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少しの間を置いてから、紗愛はゆっくり頷いた。
「……うん、その通り」
そしておもむろに掛けていたポーチから一枚のカードを取り出した。
黒を基調に、右隅に深紅の子鹿があしらわれたそれは、鹿公園のシンボルとも言えるものだった。
「明後日の午前零時、シェイエス氏のお宅にある『シュヴァリエ・パール』を頂戴しに上がります。―――鹿公園・苑仄。」
「で、あたしに警備の依頼、と」
「うん」
紗愛はにっこり笑って続けた。
「鹿公園自体は悪い組織じゃないんだよね。この間だって、僕たちが手を焼いてた詐欺集団を壊滅させてくれたし。
ただ……こっちにもね、メンツ、ってものがあるんだよ。」
「そりゃあねぇ。ま、あんた個人はパッと見とても警察には見えないから、メンツも何も無い気がするけど」
「それはお互い様でしょ。真鈴だってこんな部屋じゃいいとこ読書オタクだよ、絶対探偵なんて分からないよ」
「あー、そっちが本職、探偵副職だから」
とは言いながら、真鈴は鹿公園の予告状を手に取って、それを真剣に見つめはじめた。
紗愛の方も目を閉じ、今回の予告について考えを巡らせ始めているようだった。
五分後、真鈴は予告状から顔を上げ急に立ち上がった。
「……よっし、じゃあぼちぼち捜査に行きますか」
……そう告げてみたものの、紗愛からの返事はない。
「……紗愛?」
「…………」
見れば、紗愛は未だ目を瞑り自分の考えをまとめているようだっt………
「………zzz」
……否。
寝ていた。
「ちょwwwおまwwwひどいよ紗愛サンwww」
「………………んー?何か言った?」
「いや、寝るなしwww」
「………………うん、分かったから後は真鈴一人でヨロシク、僕連日の捜査で疲れちゃった☆」
「ちゃった☆ じゃねーよちゃんと一緒に捜査しようね紗愛さ……あのー?紗愛サぁぁン!?応答せよ!紗愛!!紗愛様アアアァァァァ!!」
神さま、私たち宝守れそうにありません。
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