FILE1 こだわりなら仕方ない

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紗愛を何とか叩き起こし、真鈴が向かった先は、街の住民は敬遠しがちな裏路地だった。 すれ違うのは柄の悪そうな男たちや娼婦ばかりで、二人は明らかに浮いていた。 「……ねぇ、ここに何があるの?」 僅かに眉をしかめながら紗愛は尋ねた。 しかし真鈴は「お楽しみ」とだけ答えて、ずいずい先に進んで行ってしまう。 はぐれたらたまったもんじゃない。 仕方なくそれ以上何も聞かず、後を付いて行くしかなかった。 ……と、不意に真鈴は立ち止まり、右を向いた。 何だろうと同じ方向を見ると、そこには布を引いて小さな露店を開いている男がいた。 「よ、久しぶり」 そして真鈴はその男に声を掛けた。 男はゆっくり顔を上げると、真鈴の姿を確認して、それから隣に居る紗愛を見やってから、掛けていたゴーグルを外してにっと笑った。 「いよぉ。真鈴じゃねぇかぃ、久しぶりだねぃ」 「元気にしてた?」 「お陰様でねぃ。ところでそっちの嬢ちゃんは?」 「紗愛よ。あたしの友達」 「……どうも」 「どーも、そう恐がらねぇでくだせぇ。 あっしはジナイチ、しがない露店商……は仮の姿、この町一番の情報屋ですよ。」 そう言って、ジナイチはひとつウインクをしてみせた。
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