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集合場所へと到着すると、看守が既に配膳を始めており、受けとった者は近場の岩に腰掛け黙々と食事をとっている。
シオと山爺も列に並び、明らかに固そうな黒いパンとボコボコに歪んだ、水の入ったアルミ製のコップを受けとると、皆から少々離れた場所に腰を落ちつけ、食事をとる。
―ドンッ―…
と、ぶつかる音が聞こえ、シオはふと顔上げると、地面に肘をつき呻き声を出す山爺と、その横に仁王立ちするスキンヘッドの大柄な男を筆頭に、三人の男達が山爺を見下ろす。
「山川の爺さんよぉ~、午前中あんだけ休んだんだ。腹減ってねぇだろ?俺が貰ってやんよ」
そう言い捨て落ちたパンを拾おうと、男は手を伸ばす。
シオはその手を反射的に掴み男を睨む。
「アルド…それは山爺のパンだ……返せ…」
静かに…しかし怒りを込めて呟き、アルドと呼んだ男の手を強くにぎる。
「あぁ?俺とお前らじゃ体格も仕事量も違うんだよ…より働いた奴が食って働かない奴は食えねぇ…当然だろが!」
アルドも負けじとシオを睨み返すがシオは引かない。
「…山爺はちゃんと働いた…お前に文句言われる筋合いはない……」
「一々うぜぇなてめぇ…殺んぞ?」
「囚人同士の喧嘩はご法度……手を出せば裁かれるのはお前…」
それを聞いたアルドはシオの手を乱暴に振り払い、首だけ後ろを向き、取り巻きに顎で何やら合図をする。
アルドの取り巻きは軽く頷くと、看守の元へと走り何やら話している。
最後に握手を交わし戻ってくるとニタニタ笑いながらアルドに耳打ちする。
「…今日は看守の目と耳の調子が悪いみたいだぜ?」
「…フゥ…いつもだけど…」
このような風体ではあるが、アルドという男、本名アルド・ハンバート。この国の有力貴族の御曹子である。
貴族の肩書きをいい事に、強盗、強姦を繰り返し、流石に庇いきれなく、国も体裁上逮捕した。
しかしあくまで形だけなので、【グランティア】には勿論出なくていいし、数年で釈放されるため、看守も後々のことを考えアルドとは仲がいい。
いずれはこいつが国政の一旦を担うと考えると、いかにこの国が腐れているかが分かる。
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