…―ヤブな名医―…

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「オラ、どうした?外野はいねぇ。かかってこいやぁ!」 シオは覚悟を決めて腰を落とし拳を握る。 牢獄にいれば喧嘩は日常茶飯事。囚人同士といえど味方はいず、むしろ全て敵である。 アルドと取り巻きの関係性は珍しくないが、シオと山爺の関係はかなり稀有である。 【グランティア】で命を落とす者が一番多いのは事実であるが、その次に多いのが、餓死と喧嘩による私刑である。 特に力を持たない老人や子供等の死亡率は高い。 一応、囚人同士の喧嘩・や殺害は禁止されているが、見てみぬふりする看守も多く、死亡率の低下は望めない。 誰もが栄養をとり、万全の状態で魔物との試合に望みたい…ただでさえ少なすぎる食事に見合わない労働と、腕輪による魔力の搾取。 この牢獄では、食料は金よりも高い。 魔物との試合の前にこの生存競争に打ち勝たねばならない。 正に弱肉強食といえよう。
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