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皮肉めいたセリフを口にすると、口角を上げながらニヤリと笑う。
その言葉を皮きりに、隣にいた看守達が男の左右の肩を掴み引きづっていく…
「…い、いやだぁぁっ!だ、誰かっ!助けてぇ!いやだぁぁぁぁぁ!!!」
引きづられながら泣き喚く囚人の声が無機質な牢獄に響きわたる……
遠くなっていく囚人の声……
(いつまでたっても慣れないな…)
週に一度は見るこの光景にシオは小さく溜め息をつく。
来週はついに自分の番。その時には自分もああなるのだろうか…
何度繰り返したか分からぬ疑問に、複雑な心情を胸に抱きながら、連れ去られていった廊下を見つめる。
「シオ…来ておったか…」
呆然と廊下を見つめるシオに山爺は声をかける。
「…山爺……俺もああなる?…」
「シオ…」
年端もいかぬ少年に見せるものではない…
先の場面もこれから始まる試合も……
そう思いながらも見なくてはいけない…
対策を立てるために…
少年の命をつなぐために…
「そろそろ試合の時間じゃ…見たくはないが…来週のヒントになるかも知れん……行こう……」
質問には答えず、眉間にシワを寄せながらもシオの肩に手をかけ促す。
シオは小さく頷くと、山爺と共に歩き始める。
この世の地獄を観戦しに……
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