…―檻の鳥―…

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  鉄格子越しに見える小さな空… 辺りを囲む冷たい石の壁と床… 左端にはワラで敷かれた粗末な寝床と、木の板で仕切られた汚い便宜。 申し訳程度に置いてあるボロそうな机が中ほどにある以外他に何もない… どこからか聞こえてくる水の滴る音が薄暗さと相まってより空虚な空気を漂わせる…  そんなお世辞にも衛生的とはいえない場所に少年はたたずんでいた… 少年の視線の先には小さな窓から見える鉄格子越しの空。 灰色の眼に映る小さな空に、少年は何を感じているのだろうか… …―カッ カッ カッ  ふと石畳の上を歩く足音が聞こえると、少年は空を見上げるのを辞め、ボロい小さな机に置いてある木製のお椀とスプーンを手にとる。 「おい、飯の時間だ!」 鉛色の鎧を着た大柄な男が右手に持ったおたまで格子を叩きながら不機嫌そうに声をかける。 少年は黙ったまま格子の隙間からお椀を差し出すと、鎧の男は左手に持ったバケツから、おたまで少年の頭にスープをかける… 「クックック…味わって食えよ?クソガキ」 既に冷めきっていたのは幸か不幸か… いやらしい声で嘲笑しながらおたまで少年の頭を何度かこづく。 少年は特に反応は示さず、床に散らばったスープの具を拾い上げお椀にいれると、無言でその場から立ち去る。 「チッ 可愛げのねぇガキだ…」 鎧の男はぶつぶつと呟きながら隣へと歩いていく… 少年はお椀に入ったわずかなスープと、拾い上げたクズ野菜を口に運びながら再び小さな空を見上げる… 先程のようなやり取りはもう何回目だろうか… 反抗した頃もあったが、それは相手のストレス発散を手伝うだけであり、酷い時には二、三日動けない時もあった… 何をされても無反応に徹する… それが少年の処世術であり、一番被害が少ない方法でもあった… そう、例え殴られようがケツを掘られようが文句は言えない… 彼らは兵士であり看守、少年は奴隷であり囚人なのだから……… 鉄格子越しの空に少年は思いを馳せる…… いつかあの空へ………と。
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