…―ヤブな名医―…

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牢獄よりもさらに薄暗く、悪臭漂う下水道に着いた囚人達は、それぞれの持ち場へと散り作業を進めていく。 国全体にはり巡らせるにはまだこの下水道は不十分であり、国にとって賃金がかからない囚人は薄気味悪い下水道工事にうってつけであった。 勿論厳粛な監視の下であり、逃げ出すのはかなり困難であろう。 脱走者・反逆者が出ないよう囚人には白い腕輪の装着が義務づけられており、試合の時以外は外せない。 この腕輪には【吸引石】とよばれる魔力を吸収する性質を持つ石が使われており、日常生活で困らない程度に魔力を吸い上げ続けている。 魔力は生物が生きていく上で必要不可欠なものであり、無くなれば死に至る。 この腕輪は魔力吸収率を看守側で調節出来、脱獄・反逆した囚人の魔力を限界以上に吸い上げ、無力化する優れ物である。 試合時には盛り上げる為に外すことが出来るが、少しでも反逆しようものなら、周りにいる兵士に蜂の巣にされる。 と言っても強力な魔物を前にしてそんな余裕を持てる者がいればの話だが… 囚人の中には元盗賊や傭兵など、武や魔法に多少なりとも長けた者もいるが、一対一で魔物を凌駕できる程の実力者は、少なくともここにはいない。
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