25人が本棚に入れています
本棚に追加
人工的に刳り貫かれた洞窟の様な下水道で淡々と作業が続く中、突如怒声が響き渡る…
「そこのジジイ!サボってんじゃねぇぇ!!」
崩した岩を運んでいた初老の男性は、歳のせいか、はたまた腕輪の影響か…
よろめいて地に膝をついてしまう…
そこに飛ばされる容赦ない罵声と鞭…
革製の鞭はいとも容易く、老人の肉を引き裂き、ボロボロに汚れた囚人服はより無惨な姿に形を変える…
「も、申し訳…」
「さっさと起きろや!クソがぁぁ!!」
老人が言い切る前に飛ぶ罵声と蹴り。
この監獄において囚人は人間ではなく、人権なんてものは存在しない…。
囚人は家畜以下であり、殺されても罪にはならず、国のある意味気まぐれで生かされているに過ぎない。
特に年老いた者は、試合にも参加できず、女や子供のように玩具にもならない。
更に体力もないとくれば、どの様な扱いを受けるかは想像に容易いだろう。
「…グッ、グゥゥゥ…」
呻き声を挙げながら散らばった岩を籠に戻し立ち上がろうとはするが、体力はなく、脇には蹴られた痣、背には鞭による裂傷により血が滲んでいる…。
額に汗を浮かべながらも必死に立とうとするが、痛みによってまた膝をつきそうになる…倒れると思った矢先、老人の体を支えたのは足ではなく、いつの間にか近くに来た少年であった。
「…手、貸す」
老人とサイズこそ違うが同じ服を来た灰色の目を持つ少年…
白いボサボサの髪は汚れてくすみ、袖から伸びる腕は細いながらもしっかりと筋肉がつき、二の腕には囚人の証であるナンバー…【2100】と刻印されている。
長年腕輪をつけているせいだろうか、左手首の皮膚は荒れていた。
少年は無表情にそう呟くと老人に肩をかし歩きだす…
「…すまんの…シオ…」
「いい…お互い様…」
その様子を見ていた先程の看守は、興味が失せたのか皮肉げに鼻を鳴らすと、他の囚人達に目を配る。
老人と少年…シオは看守から見えない位置までいき、シオは運んでいた籠を降ろし、老人を座らせる。
「…山爺…大丈夫?」
「ああ、平気じゃよ…」
「…でも血…」
「大したもんじゃないわい…自分で分かる。これでも医者じゃ…まぁヤブじゃがのう」
最初のコメントを投稿しよう!