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フォッフォッフォッと笑う山爺と呼ばれたこの老人、本名山川心斎。
シオの育ての親ともいえる人物であり、唯一心を許している相手でもある。
元は闇医者であり、辺境の貧しい国を回りながら、貧困層を中心にその腕を奮っていたが、この国では難病とされていた病を豊富な知識と経験で救った所、その腕を妬んだ他の医者が通報、そして今に至る。
「ワシよりもお前じゃシオ…来週…試合じゃろ?」
「……うん」
そう呟くとシオは顔をうつむける。
「ワシが代わりに出れればのぅ…こんな老いぼれの命!!いくらでも」
「その先は!……言わないで…」
珍しく語意を強めるシオ。
山爺は俯くシオの頭を優しく撫でながら、自身の無力さを呪った…。
試合は15歳~65歳まで。それ以下・以上は試合にならない為観客を盛り下げる。
特に子供は、容姿が良ければ売れるし、売れなくても労働力や看守の玩具など、使い道は多い。
シオも例外ではなく、幼き頃は散々な目にあった…。
山爺に出会ってから多少はマシになったものの、無くなるということは無かった。
幼さが残る端正な顔立ちに、男としては小柄な部類に入る体…
そんなシオが売りに出されなかったのは、ひとへに山爺のおかげである。
難病の治療法を引き替えにシオを庇った。
当初、こんな牢獄で暮らすよりも、いっそ売られて出た方がマシなのでは…と山爺も考えはしたが、シオは「山爺と一緒にいたい」と願い出た。
そんな、自身を慕ってくれるシオに、山爺は惜しみない愛情を与えた…。
だからこそ、どうにかしてシオを助けたかった。
いつかこの日が来る事はわかっていたものの、シオを鍛える以外何も出来無かった。
鍛えると言っても山爺とて戦は素人。筋肉の付け方や多少魔物の知識はあっても、戦い方は知らない。
鍛錬と工事によって筋肉はついたものの、シオに実戦経験はなく、精々囚人同士の喧嘩が関の山…
魔物に立ち向かえる実力などある筈もない。
他の方法として脱獄を考えたこともあったが、腕輪が外れない限りどうしようもなく、それ以前に厳重な警備から抜け出せるアイディアも体力も山爺は持っていなかった…。
ピピィィィ~~――…
二人が物思いにふけっていると、聞きなれた笛の音…
午前の労働が終わり、昼食の時間を伝える点呼の笛。
二人は立ち上がり集合場所へと向かう。
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