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なんでもない、本当になんでもない話だ。でも聞いてくれると嬉しいな。
あるところに三人の男と一人の女がいた。なんてありきたりな冒頭はお気に召さないかな? まぁ我慢してくれよ。
そのうちの一人の男。仮にそうだな春彦としよう。
彼等は決まってとあるマンションの八階の一室に集まる。というのもそこは春彦の家だ。
今日も四人で集まる予定だ。既に女が春彦宅を訪ねて来ている。
彼女の名前は、夏実としよう。夏実は素晴らしく面倒見の良い魅力的な女性だ。
春彦とは同い年で、二人一緒にいるのが常だった。付き合っているか? と聞かれたら、首を縦には振らないだろうが、確かに二人は好き合っている。
「おーい、入るぜ」
二人がリビングにて他愛もない言葉を投げ合っていると、男の声が聞こえてきた。恐らく秋山と冬木だろう。彼等は春彦たちより何歳か年上で、人生の良き先輩だ。
「部屋に入る時は?」
夏実が二人に、わかってるよね? というニュアンスを含めて言った。
「秋山入ります」
「冬木入りまーす」
夏実がよし、と呟くのが微かに聞こえる。
変に思うかもしれないが、これが彼等のルールなのだ。
こうして今日も集まった四人は、春彦の家を後にした。
四人でぞろぞろとマンションの廊下を渡り、エレベーターに乗り込んだ。
夏実が1階のボタンを押した。
しばらくすると夏実が高らかに言う。
「1階でーす!」
彼等は秋にくり出した。
既に夏を思い出にしようとしている秋には、あの暑苦しさなど見当たらなかった。勿論寒いわけでもない。
ちょうど良い、そんな一言がぴったりなのだ。
彼等はとある公園にやって来た。この四人のホームグラウンド。
綺麗な小川が流れるすぐ傍に、それはある。
緑色が地面を覆ったその地は、ちょうど高校の体育館ぐらいの広さ。
公園と言うわりには遊具は何一つ無く、多目的広場といったものに近い。
公園の隅には大きな樹が根付いている。公園は樹で囲まれているが、一際目立つあの大樹はこの公園のシンボルだ。
そしてその木陰にはベンチが二つ並んでいる。木でできた温かみのあるその手触りを四人の誰もが愛して止まない。
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