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わたしたちは、禁断の世界の中に居る。
「わたくしは桜子様を誰よりも好いております」
黒と白のハッキリしたレース付きのメイド服が汚れるのも構わず、百合子は赤い絨毯の敷かれた床に跪いた。
豪華な飾りのあしらわれた、やはり真っ赤な椅子に座り、桜子は優雅に微笑んで百合子の頭をそっと撫でた。
「二人きりの時は"桜子様"じゃないでしょう、百合子?それと、敬語も駄目よ」
「ぁ…ぇっと…。……桜、子…」
「うん」
桜子は満足そうな表情を浮かべ、再度百合子を撫でる。
百合子はまだ、自分より遥かに上の身分の桜子を呼び捨てにする事に慣れない。それでも桜子自身の願いであるならば、使用人の百合子としては、聞く他ないのだ。
使用人と、皇女。
主従の関係だったのも、今にして思えばつい昔の事。
今はこの二人以外誰も知ることのない、恋人同士。
身分の違いや同性という問題はあるが、愛し合ってしまったのだから、仕方がない。
「さ…桜子、私……」
「うん、わかってる。わたしも百合子が好きよ」
「っあ…」
桜子にいきなり抱き締められ、百合子は顔を真っ赤にした。おそるおそる背中に手をまわすと、抱き締める力が強くなり、より密着する形になった。
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