月に溺れる

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わたしは進んだ。目の前が海水で満たされても、進んだ。月の映る場所を目指して。 海水が目に沁みたが、気にしない。わたしは月が欲しいんだ。 ごぼごぼとなる呼吸も気にしない。あと少しで手に入るのだから。   ああほら、月明かりの差す水面はすぐそこ。   わたしはもがくことも出来ずに、明かりをぼんやり見つめながら沈む。酸素が足りなくてとても苦しい。   手を伸ばせば、月光がわたしを照らしていた。ああなんて綺麗なんだろう。ゆらゆら揺れる水面と共に、月の形も歪む。     ああ、わたしは漸く月に近づけた。     遠退く意識のなか、わたしは月に溺れた。
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