8人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしは進んだ。目の前が海水で満たされても、進んだ。月の映る場所を目指して。
海水が目に沁みたが、気にしない。わたしは月が欲しいんだ。
ごぼごぼとなる呼吸も気にしない。あと少しで手に入るのだから。
ああほら、月明かりの差す水面はすぐそこ。
わたしはもがくことも出来ずに、明かりをぼんやり見つめながら沈む。酸素が足りなくてとても苦しい。
手を伸ばせば、月光がわたしを照らしていた。ああなんて綺麗なんだろう。ゆらゆら揺れる水面と共に、月の形も歪む。
ああ、わたしは漸く月に近づけた。
遠退く意識のなか、わたしは月に溺れた。
最初のコメントを投稿しよう!