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「その日から、眠ると必ず女の人の笑い声が聞こえるって、その子眠ろうとしなくなっちゃったんです」
日に日に愛里はやつれていく。
人間は寝ないと生きれない生物だと言うのに、慣れもしない徹夜を何日も続ければ、体は悲鳴を上げるに決まってる。
怖いくせに、優しい愛里は人に頼らない。
「助けてくれ」と、愛里が口にしたのはただ一度。
それでも、私が自分の家に泊まればいいと誘っても、迷惑だからとやつれた笑顔で拒否をする。
私は何か力になれないの?
拳をぎゅうと握り締めた。
「このままじゃきっと…彼女、倒れちゃいます。お願いします。助けて頂けないでしょうか…!」
唇を噛んで、ガバッと勢い良く頭を下げた。
愛里を助けたい。
助けられるなら、何度だって頭を下げる。
やつれた笑顔じゃなくて、輝く笑顔を取り戻してあげたい。
「………………何か勘違いしてらっしゃるようですね」
ゆったりとした陽次郎さんの声。
勘違い?そんな…ダメだってこと?!
思わず頭を上げると、にこりと笑んだ陽次郎さんと目が合った。
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