第一夜

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「私はあくまで依頼される側の人間で、貴方は依頼する側の人間なんです。…ですから、ふさわしい言葉は『助けて頂けないでしょうか』では、ありません。」 微笑む陽次郎さんの表情も、纏う雰囲気も、…とても柔らかくて。 この人ならきっと信じられる。 私はただ漠然と、そう思った。 陽次郎さんを見据える。陽次郎さんは私の言葉を待っているようだ。 …………覚悟は決まってる。 愛里を助けたい。 ただそれだけだ。 「…『助けて下さい』。」 私の言葉を聞くなり、陽次郎さんは満足気に微笑みを深くして席を立ち、そしてこう言った。 「ご依頼、承りました。」
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