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私は、その場で立ちすくんだ。
左手には買ったばかりのお気に入りのバッグ、そして右手には手書きの地図と住所の記載してある紙を携えて。
「げ」
…と、思わず声に出してしまったのは仕方がない、と思う。
だって書いてある住所は間違いなくここで、地図もしっかりあっていて。つまり、ここが私の目的地であるということで。
「…げ。」
もう一回言って見た。しかし横たわる現実は変化なし。
再び、しっかりと目の前の店を上から下まで見据えてみた。
その店は古ぼけた屋敷で、確かに縦も横も、サイズはなかなかのものだ。
しかし問題なのは、外見だ。
築何年か知らないけれど、古ぼけて塗装のはげた壁。
その壁にまとわりつくツタ。
家を囲う…いやむしろ覆うように伸びっぱなしの雑草。
そして、玄関の上の方に傾いて立掛けてある、達筆すぎて何が何だか読めない看板。
…ここが、『妖請け負い屋』。
「…名前からして怪しいけど、まさかここまでとは。」
予想以上だったわ。
奇怪事件を解決してくれるっていうから来たのに、まさにここで起きそうな所じゃないか。
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