第一夜

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髪の毛は見事なまでの漆黒で、あまり髪型にこだわらないのか毛先は四方にハネている。 それでも不潔な感じはしない、自然な感じだ。 服装は何故だか着物で、あっさりとした爽やかな柄と暗めの青がよく似合っていた。 たっぷりとした着物の袖には手を通さず、中で組んでいるようだ。 「『妖請け負い屋』へ…ようこそ、お客様」 瞳を細めて男性がにこりと微笑んだ。その笑顔に、思わずみとれてしまった。 切長の瞳は焦茶。通った鼻筋、ゆるく弧を描く唇。 カッコイイというよりかは綺麗…そんな感じだ。 「あ、お邪魔、します…」 暫しの沈黙の後、ハッと気付いてお辞儀をすると、靴を脱いで上がってくるように言われた。 (…こんなに綺麗な人が店主だとは思わなかったな) もっと怪しい人かと思っていたら、こんな優しげな人だったなんて。 なんて思いながら、案内されるがままに奥へ進んだ。
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