Phantasmagoria

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 目を覚ますと、儚くも美しい世界が広がっていた。けれど、これは夢だ。そのことが分かって、僕は少し哀しくなった。――何故、これが夢なのか。そんなことは分かり切っている。これ程、僕の心を動かすものは存在しないからだ。たとえ、どんなに素晴らしい風景だったとしても、それは僕の心の中の風景でしかない。  ……僕が心の殻に閉じ篭っていることぐらい、とうの昔に理解っている。ただ、どれくらいの時が流れてしまったのかは、よく分からないのだが――僕は、すべてのことに無感動になってしまったのだ。  すべてのはじまりは、親が僕の異変に気付いたことだった。十五の夏――祖母の葬式の時だ。ずっと僕を可愛がってくれていた祖母が死んだことがショックで、僕まで死んでしまいそうだ、そう思っていた。なのに皆、僕を見て妙な顔をしている。何故だろう、と思って母親を見ると、母親はハッとして僕に言った。
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