Phantasmagoria

4/11
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
 僕はどうやら、精神科にお世話になるような病気だったらしい。『気がふれた』と言われても、仕方がないんじゃないだろうか。……医師から告げられた病名は、『感情障害』。精神分裂病に数えられるものらしい。祖母の葬式の時に見られた症状は、感情倒錯や錯表情と呼ばれる。感情表現――仕種や表情のことだ――が、事柄と対照的になるのだという。……哀しい時に笑う、だとかも、そのうちの一つだ。病状が進行すると、無感動になるとまで言われた。それこそ、表情という表情が消え、能面のようになることもある。――無感情であるが故に、まわりのことに無関心になってしまうのだそうだ。髭を伸ばしたまま、剃らなくなったり――くたびれた服でも気にしなくなる。ぼさぼさ頭のままでも? と訊くと、そうだね、と先生は言った。 
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!