Phantasmagoria

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 時々――夢の中で、僕の表情は消えているのだろうか、と考えることがある。しかし、逆に言うと現実世界では、そんなことを考える気力さえも失われてしまっているのだ。無気力で、退屈な日々。すべてが白黒で、現実味がないようにさえ思われてしまう。夢の方が現実的に思うのは、僕の思い違いだろうか。――けれど、そう思ってしまう程、僕にとって『夢』というものは内容が濃いのだ。現に今も、美しいものを美しいと思い、感動さえも覚えている。涙が溢れた。頬を伝う。ただの夕陽だというのに、だ。どうしてか、とても儚くて、美しいと思う。……僕は夕陽のどこに儚さを覚えているのだろう。――僕が思うに、きっと、一日の移ろいを感じさせるからじゃないだろうか。昼と夜の境目が、うっすらと虹のように空一面に広がっている。 「ああ、綺麗だ……」  自分の口から、久し振りに『綺麗』という言葉を聞いた。
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