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この瞬間をどれだけ待ち侘びたことか。
目の前には顔を歪めた赤い男。先日までは王として崇められ、崇拝されたこの男の首を撥ねることだけを目標に突き進んできた。
その命は既に自分の手の中にある。握ってしまえば壊れてしまうその命。どのように扱おうとも自分の勝手。それは本当に残虐な考えで。
どこかでそれを否定しようと頑張る自分がいることもまた確かで。
「デレク、撥ねよ」
今まで黙っていたのに口を開いたかと思えば、まるで命令。
違う。わたしが見たいのは、こんなに冷静な形ではない。もっと汚く、もっと醜い形のはず。それなのにそれなのに……!
「だまれ、今の貴様は我が手中にあることをゆめゆめ忘れるな」
「そうだな。余の命はお前が握っている。それは確かだ。だが、お前こそ忘れたか?お前の親友の命を奪ったのは余であることを」
頭に血が上る。沸騰しそうなほど血が沸く。
どうして、この男はこれ程、勘に障ることを言うのだろうか。
「さぁ、奪え。我が命を。気の済むまで切り刻み、叩き伏せさせろ」
もう何も考えられない。今はただ、赤い男をさらに赤に染めたい。それだけだ。
首筋に置かれていた剣を振り上げる。男は一瞬笑った気がしたが、気にしない。今は、今は……。
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