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空が目を覚ました時には、窓から朝日が差し込んでいた。
「あれは……夢、だったのか?」
空は確かめる様に自分の手の甲を見る。
そこには、くっきりと“Ⅹ”の文字が刻まれていた。
あれは夢ではない。
つまり……。
「僕も、能力者って事か……それもレアな」
空は苦笑しながら、自分の手の甲を見る。
たまには早めに降りようと立ち上がると、ベッドの上に何かが置いてあるのが視界に入った。
空はベッドの上にある物を見て、絶句する。
ベッドの上にあったのは漫画等でしか見ない、剣。
柄の終わりに球体、諸刃で頭身が65cm程の細身の剣であった。
もっとも、空はそれを見て夢のないことにまず困ったのだ。この剣を入れる鞘が何処にない事に。
「どうしよ……こんな物騒な物。間違いなく銃刀法違反じゃないか」
法に関わるので真剣に考えていると、空は神が言った事を思い出す。
《更に、君達には能力と一緒に武器を与えよう。武器は君達が生活の中でも怪しまれずに携帯出来る様、いつもは小さくして置ける様にする》
つまり、この剣を小さく出来ると言う事。
空は試しに呟く。
「小さくなれ」
何も起きない。
「スモール! ポケット! 消えろ!」
なんの反応もない。
(小さくなれ……小さくなれ……)
拝んでも無反応。
さすがに空は諦め、とりあえず充電スタンドに立て掛けた携帯を手に取る。
すると、急に剣がカタカタと揺れ出した。
「な、なんだ?」
驚く間もなく、風船から空気が抜け萎んで行く様に剣は萎縮し、観光地でよく売っている数百円程度のストラップへと変わった。
それは一瞬で空の視界から消え去り、携帯を持つ手に何かが通り過ぎた様な風が当たるのを感じとり、目を向けると、先程の剣は携帯にストラップとして付けられていた。
…………。
まさかと思い、試しにそのストラップを外してみる。
すると、凛とした音が辺りに響き、剣は元の大きさへと戻った。
「わ……面白いな、これ」
空はしばらくの間、それで遊んでいたが、やがてある事を思い出す。
“能力”と“代償”の事を。
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