第一章

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能力については……まだいいか。自分は格別に強いらしいし。試すにしても家の中じゃ試さない方がいいな。 「お兄ちゃーん! ごっ飯だよー!」 下から妹が呼ぶ声が聞こえる。 「分かった、今行く!」 空は階段をギシギシと言わせ急ぎで降りる。 能力はいいとしても、後は代償かな……僕は、いったい何を代償にしたんだろう? 階段を降り終えた空が代償を考えていると。 「お兄ちゃんたまには早いねー!」 居間から妹の声が聞こえてきた。 「うるさいぞ優子、たまには僕だって早く起きる」 空は妹を軽くかわして食卓へ。 「あら、おはようソラ……」 と、母さんが挨拶してくれた。けど……。 「ん? どうしたの母さん、元気無いよ?」 「そ、そうかしら……心配しないで、大した事じゃないわ」 そういいながら母さんはちょっと不安げな表情で説明する。 「実はね……今日は大地さんから電話が来なかったのよ」 母さんは軽く、無理に微笑む。 「父さんが? 珍しいね、そんな事、何があったんだろう……」 空の父さんは海外に単身赴任している。 そして、空は思い当たる。 今の自分が最も尊敬し、最も頼りにしているのは、父さんではないか? と……。 「ねぇ……母さんからは電話かけたの!?」 空は勢いよく叫ぶ。 母さんはビクッとなったが、すぐに答えた。 「え、ええ……電話したわ。でもいくらかけても出なくて……仕事が忙しいのかしらねぇ?」 母さんははぁっ溜め息を着く。 その間にも、空の顔は青冷めていく。 それから、父さんとの連絡は……完全に途絶えた。
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