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痛い……痛い……死ぬ……痛い……痛い……痛い……死ぬ……痛い、死ぬ……痛い痛い痛い!
空は心で絶叫する。
死ぬんだ……僕はここで……。
痛みが、感覚がなくなっていく。
遠くからなのか、聞きにくい声が聞こえる。
空は、悟る。
ここが天国かと。
空は、寝起きの様にゆっくりと目を開けた。
だが、そこは天国などでは無かった。
「大丈夫かい? 君」
目の前には見知らぬ青年が、心配そうな顔で立っていた。
空はその状況に混乱する。
「え……どうゆう、こと?」
「それはこっちが聞きたいよ。ちょっと近くのコンビニに買い物に出掛けたら、人が血溜まりの中に倒れているんだから……怪我は無さそうだけど」
青年の最後の一言で、空は目を丸くする。
「そんなバカな……」空は鎌が刺さった筈の傷口に触れる。
なんとも無い。
怪我なんて、全くない。
空が呆然としていると、青年が安堵の顔で携帯を取り出す。
「とにかく、死んでなくてよかった……じゃあ僕は行くけど……大丈夫? 救急車でも呼ぼうか?」
青年が空に問いかけた。
空は大丈夫だ、と頷く。
「そうかい……じゃあ、気をつけて」
青年は去った。
「何か……狐に摘まれた気分だ……」
空はそのまま、その場を後にし帰宅する。
その後は、血だらけの制服を母さんに咎められ、妹になじられただけで一日が終わる。
何度も傷口に触るが、何処も痛まない。
夢と思いたかったが、あの血溜まりと同い年の筈の少年の、あの冷淡な声が脳裏に焼き付いている。
その時はまだ、分からなかった。
自分の、能力を……。
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