第二章

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それは、休みの日、近所の公園にいた。 それが目の前に現れた時、空はこの上なく神と言うものを呪った。 もしかすると、このまままた平穏が戻って来るのではないか? 自分はあいつに殺されたのだから。 と思えてきた矢先、その幻想を打ち砕く者が目の前に現れたのだから。 今は相手に聞かなくても分かる、目の前にいるのが……あいつと、片桐と同類だと。 「やあ……こんにちは」 そいつは、空に挨拶し始めた。 「そんなに警戒しないで……ただ、最低限の自己紹介をしようと思っただけさ」 そいつは微笑みながら、優しい声で言う。 だが、言葉の裏を返せば『戦おう』と言っているのも同然である。 「警戒してるね、じゃあ私から自己紹介するか……私は梅沢 大、三十七歳、この辺りに住んでるしがないサラリーマンさ」 梅沢は頭を下げる。 ボサボサの黒髪と平凡な顔つき、くたびれたスーツが目に着く、まさに普通といった感じである。 「ほら、早く君も」 梅沢は空の自己紹介を促す。 空はしぶしぶと自己紹介する。 「結城 空、高校二年生」 空は早口に答えた。 「ふむ、苗字が結城で下が空か……いい、いい名前じゃないか、少し羨ましいよ」 梅沢は笑って空の名前を誉める。 「さて……自己紹介も終わった所で」 梅沢が一歩、空に向かって踏み出す。 「始めようか、戦いを……〈Ⅹ・ヒューマン〉?」 そうゆうと、梅沢の額と両手の甲に“Α”と浮かび上がる。 思えば、これが空にとっての、ちゃんと戦えた最初の戦い……。
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