第一部:その男、伝説に消えた者

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然し、どちらが偉いかは、一目瞭然。 大男の方が、明らかに偉そうに見えるし、態度もデカイ。 また、丸坊主のくせに、モミアゲから顎にかけ、態と残した髭が線を引いていた。 サークルカウンターに近寄ったポリアは、その偉そうで態度のデカい中年の大男に向かって。  「マスター、呼ばれたから来たわよ。 話って、ナニ?」 ぶっきら棒で、ツンケンとした言い方だ。 このポリアは、男性に恐怖症に近いコンプレックスがある。 だから、一度でも警戒したり、言い争いをした男性には、キツイ言い方を見せる傾向があるのだ。 然も、領家のお嬢様なのか。 育ちから、他人に対して礼節は払うが、決して謙りはしない。 一方、チェアーに座った大男は 「ん~?」 と、首を巡らせてポリアを見た。 「おう、来たか」 「話って何よ」 「おいおい、いきなりツンケンすんなってよ」 座ったままに、大男は苦笑い顔で言って来る。 だが、ポリアは横を向いて。 「昨日、あんだけコケにされたら、誰だってツンケンもするわよ」 と、既に喧嘩腰。 大男は、顎をポリポリ掻いて。 「当たり前だろうが。 腕に合わない仕事を請けるし、その上で俺の査定に、“ケチ”呼ばわりしたろうが」 此処でイルガは、ポリアに小声で。 「お嬢様、冷静に・・冷静に願います」 と、促す。 主と顔を突き付けたく無いポリアは、イルガの方に顔を向けながら頷いて。 「で? 早く用件を話してよ。 今日は、宿に仲間二人を残して来たから、お叱りなら手短にお願いしたいのよ」 すると、大男の主は、ポリアに近づくように卓上に腕を伸ばして、身体を乗り出して寄せると。 「お叱りじゃない、ポリア。 実は、一つ相談が有って呼んだんだ」 この主人が、まだ中途半端の駆け出しチームのポリアに“頼み”とは、相当に珍しい話である。 これまでの主の態度を思い返すポリアは、主人である大男を見て。 「マスターが、この私に“頼み”、・・・ね? 昨日の今日で、どうゆう事よ」 と、その麗しい顔を近付ける。
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