Kの様な者が相手なら、殊勝な気持ちにも成り。 言動も、自然と何処か丁寧に成る事も現れるポリアだが。 この主人が相手では、彼女の素直さを引き出すのは無理で在ろう。
一緒に居たイルガも、主人の言い草に棘を感じた。 この主人、自分の宿に野菜や果実を納める相手の大商人の娘が、この脇に居るマルヴェリータと解っていないと見た。
(恐らく、言えば床に平伏す結果に成るだろうな)
然し、マルヴェリータは父親を頼る様で、それを嫌ってしない。
(ま、知らぬが幸い・・か)
マルヴェリータの家だけでも、この主人には恐れ入ってしまう存在だろうが。 ポリアの家の存在は、それを超える恐れが在る。
さて。 気分も悪いが、広い食堂の一角に一同で座ったら。
「あ、帰ってきた・・」
従業員の男が、テーブル席に座るポリア達に、水挿しとグラスを出そうとしていた処で。 違う方向を見ては、そう言うものだから。
ポリア達も、一斉にロビーの方を見れば。 Kが、階段で上がって行く所である。
「ケイが、帰ってきたわ」
「真っ先に上ですな、お嬢様」
「うん」
ポリアとイルガの話に、マルヴェリータとシスティアナは黙ってしまう。
仕方無しに、注文を決めて従業員に言う時。 Kが置き去りにした荷物一つを手にして、下に降りてきた。
ポリア達の視線に気付いたKは、ポリア達の元に従業員と入れ替わりで来る。 近くに彼が来れば、衣服がまだ濡れていて。 包帯も、かなり濡れていた。
「お帰り・・で? 直ぐに行くの?」
ポリアから問われ、頷くK。
「あぁ。 ちと、急な仕事になりそうだ。 今夜は、協力会の館に泊まる」
と、云うなり、Kは踵を返して。
「お前達」
「?」
「もう、逢う事も有るかどうか解らんが。 ま、元気でやれ」
こう残したKは、さっさとロビーへ歩いて行く。
「え?」
あっさりし過ぎた別れに、ポリア達はポカ~ンとしてしまった。
昨夜の食事中では、旅を急がずに。
“ラキームの事件がどうなるのか、それを見定める”
と、こう言っていたK。
それを聴いていただけに、気の抜けた食事になった。
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