第二部:闇に消えた伝説が、今動く。

6/345
前へ
/619ページ
次へ
Kの様な者が相手なら、殊勝な気持ちにも成り。 言動も、自然と何処か丁寧に成る事も現れるポリアだが。 この主人が相手では、彼女の素直さを引き出すのは無理で在ろう。 一緒に居たイルガも、主人の言い草に棘を感じた。 この主人、自分の宿に野菜や果実を納める相手の大商人の娘が、この脇に居るマルヴェリータと解っていないと見た。 (恐らく、言えば床に平伏す結果に成るだろうな) 然し、マルヴェリータは父親を頼る様で、それを嫌ってしない。 (ま、知らぬが幸い・・か) マルヴェリータの家だけでも、この主人には恐れ入ってしまう存在だろうが。 ポリアの家の存在は、それを超える恐れが在る。 さて。 気分も悪いが、広い食堂の一角に一同で座ったら。 「あ、帰ってきた・・」 従業員の男が、テーブル席に座るポリア達に、水挿しとグラスを出そうとしていた処で。 違う方向を見ては、そう言うものだから。 ポリア達も、一斉にロビーの方を見れば。 Kが、階段で上がって行く所である。 「ケイが、帰ってきたわ」 「真っ先に上ですな、お嬢様」 「うん」 ポリアとイルガの話に、マルヴェリータとシスティアナは黙ってしまう。 仕方無しに、注文を決めて従業員に言う時。 Kが置き去りにした荷物一つを手にして、下に降りてきた。 ポリア達の視線に気付いたKは、ポリア達の元に従業員と入れ替わりで来る。 近くに彼が来れば、衣服がまだ濡れていて。 包帯も、かなり濡れていた。 「お帰り・・で? 直ぐに行くの?」 ポリアから問われ、頷くK。 「あぁ。 ちと、急な仕事になりそうだ。 今夜は、協力会の館に泊まる」 と、云うなり、Kは踵を返して。 「お前達」 「?」 「もう、逢う事も有るかどうか解らんが。 ま、元気でやれ」 こう残したKは、さっさとロビーへ歩いて行く。 「え?」 あっさりし過ぎた別れに、ポリア達はポカ~ンとしてしまった。 昨夜の食事中では、旅を急がずに。 “ラキームの事件がどうなるのか、それを見定める” と、こう言っていたK。 それを聴いていただけに、気の抜けた食事になった。
/619ページ

最初のコメントを投稿しよう!