こう言ったポリアは、飲み過ぎにて頭痛のする頭を振った。
昨夜、ポリアとイルガの泊まっていた宿には、まだ仲間が二人残っていた。
一人は、魔法遣いのマルヴェリータ。 もう一人は、僧侶のシスティアナで在る。
これは、冒険者にしては情けない話だが。 昨日、〔斡旋所〕と呼ばれる場所に、仕事を探しに行ったポリア達は、見捨てられ掛けた報酬の良い仕事を見つけ、それを請けようとした。
だが、その許可を認める責任者と云うべき者が、斡旋所に居る主で。 彼に、仕事の難易度と、これまでのポリア達の実績を比べられ。
‘差が有り過ぎる’
と、拒否された。
然し、まだ若く気の強い処が在るポリアは、主に刃向かった言い方をした。
だが、冒険者としての実績は、その辺に炙れる‘駆け出し’と呼ばれた者と、全く変わりないポリア達。
だから、現実を教えようと思った主により、他の冒険者達も居る目の前で、散々に罵られた訳で在る。
悔しい話だが、実績の事に関しては、大いに事実。
その為に、昨夜は仲間内で大酒を飲み浴びてしまった。
処が、だ。 何が理由かサッパリだが、急に風向きが変わったのか。 今日の朝になって、いきなり斡旋所の主から呼び出しを受けたのだ。
だが、宿の残った二人は、飲み過ぎて二日酔いになり。 陽の下に出たくないと、ポリアに任せた次第で在る。
さて、街の中心地から、西に大通りを行く事、少し。 広がる港の風景を含めて、海を一望する事が出来る、高台に差し掛かる曲がり道が在る。 その道の内側を前に面して、館が建っている。 成りは古めかしいが、黒くどっしりとした大きい館であった。
この館の前に、ポリアとイルガの二人が遣って来た時。
館の前の通りにて。
「じゃ、行こうか」
聞こえ方が心地良い、低音の声をした若い男性冒険者が、5・6人の仲間に声を掛けた。
声を発したのは、リーダーらしき青年。 青い刺繍入りの立派なマントの下に着た、赤い上半身鎧が春の日差しに照らされて、目映い光沢を反射する。 そして、その背中には、刃渡りだけでイルガの身の丈を軽く超えそうな、大型剣を背負っていた。
その一団を見たイルガは、既に見知っていた者達で在った為か。
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