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魔界
日の光の射さぬ巨大な地下空洞を連想させる空間。
至る所に存在する、炎の湖や毒の沼、草木も生えぬ岩だらけの山など、およそ人間が住むには適さない環境。
そんな魔界の中心、禍々しく黒光りする鉱石でできた高い壁に囲まれた、魔王宮。
古代神殿を想わせる石造りの外装も、やはり黒光りする鉱石で造られている。
中は広い空間がただただ広がっており、その中心には、地の底に続く螺旋回廊の入口が口を開けている。
左手側に巨大な扉が並ぶ回廊を、一体どれほど降りたのだろうか、豪奢な、この黒い世界にはおよそ似つかわしくない、黄金の縁取りに白銀の装飾で飾られた、しかしやはり黒い鉱石の扉が現れる。
魔王の腹心たる、東西南北四方位の王、天界、人界双門の守護者達が集う為に用意された魔将の間である。
「どう言う事だ!?」
空間を震わせ、怒声が轟く。
広いがしかし石造りのテーブルと八脚の椅子しかない大広間、
しかも、椅子達の内半分はその役目すらなしてはいない……。
声の主は鉛色の甲冑姿をした南の王ギアス=ギア。
「まったくだな……この一万周期の間、何の為に我慢してきたと思っている?」
それに追々し声を漏らしたのは西の王ダレス、こちらは赤い布を全身に巻き付け、静かに、しかし断固とした拒絶の意思を示していた。
二人に詰め寄られた青いローブの男は、しかし、何の感情も表さず、ただ、淡々と同じ言葉を紡ぐ。
「我々は今度(こたび)の創世には参加しない、これは母上の決定です」
部屋の中の三人を見回し、東の王ノルディアースはただ、それだけを言うと、また口をつぐむ。
「おい! ギ=ヌレグス、お前も何とか言ったらどうだ!」
苛つくギアス=ギアに矛先を向けられた黒色の神官衣に身を包んだ北の王は、しかし何の反応も見せない。
「糞が!」
荒々しくテーブルを叩き付け怒鳴るギアス=ギア。
やにわに席を立つダレス。
「! おい、ダレス、何処に行くつもりだ?」
問うギアス=ギアに一瞥くれて、
「母上もいない……フェレアスウォーネ、フランディオも参加していない、しかも一方的に用件だけを告げられる、こんな会議に意味は無いだろう?」
「あぁん? じゃあお前はこれで納得するつもりかぁ?」
「まさか……直接、母上に理由を尋ねる。納得いかなければ……」
………………。
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