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扉を潜ると、そこは魔王の間、所謂、謁見の間である。
白を基調とした部屋には飾り気も無く、広い空間には、ただ正面に十二段の階段と、その壇上に引かれた白いベール、扉からそこまでは、紅い絨毯が敷かれていた。
ベールの向こうからは、圧倒的な、それでいて、全てを包み込む存在力が感じられる。
「よく来てくれたわね、しかも、四人そろってなんて珍しいわね?」
奥から姿を現した、闇を集めてこしらえたかのような漆黒ドレスを纏った女性が優しく声を掛ける。
その声は若々しく、しかし落ち着きのある女性のそれであり、およそ魔王と呼ばれる存在には似つかわしくない清涼感すら漂わせていたが、同時に魔界において他者を圧倒する四方位の王をも飲み込む絶対的な存在力をも併せ持っていた。
「はっ、ご無沙汰しております! 母上」
やおら、片膝をつき声を張るギアス=ギア。
他の三人もそれぞれに礼を示す。
「私は止めたのですがね……」
そう言うノルディアースはばつの悪い表情を作る。
「あら? いつでもいらっしゃいと言っているのに? あまり押さえ付けちゃダメですよ?」
優しい笑みを皆に向ける魔王。
「あの……母上、一つ聞きたい事があるんだが」
恐る恐る問うダレス。
「あら? なぁに?」
小首を傾げ、微笑む魔王。
「今回の創世、参加しないと聞いたが、何故ですか? 俺達は今までその為に存在してきたというのに……」
「うーん? 貴方達は私の子供でしょ? とても強い子達だから、多少の喧嘩はやんちゃで済むけれど、人界の子も私の子供なのよ? あの子達は貴方達みたいに丈夫じゃないのだから、虐めは良くないと思うの、母さんは」
少し困ったように、眉間に薄くしわを寄せ答える魔王。
「ちょ、ちょっとお待ちを、母上!」
狼狽の声を上げるギアス=ギア。
だから聞かないほうがよかったのに、と呟くノルディアース。
「母上! そんな理由では、納得できんぞ。俺は行きますからね!」
精一杯、強気に不満の声をあげ、ダレスは踵を返す。
(まるで家出だな……)
少し悲しい空気すら流れ、残り三人も立ち上がる。
「母上、とりあえずこれで失礼します」
一礼し退出しようとした彼等に、
「会えて嬉しかったわ、また顔をみせてね?」
と、尚も優しく送り出す魔王だった……。
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