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「さ、さっきのは冗談だから、い、嫌! お、お願い助けて……」
「もうダメだよ、絶対に許さない! 美桜ちゃんも……そしてお前も!!」
男が司郎を向いて怒鳴るのと同時に、我慢していた美桜の涙腺が一気に開いた。
青ざめてゆく頬を伝って、大粒の涙がとめどなく次から次へと溢れ出てくる。
(あのナイフをどうにかしないと、でもあの子があんなに震えていたら……)
司郎は内心そう呟くと、美桜の方をじっと見つめた。
恐怖で全身が小刻みに震えている。
口からは、小さくカチカチという音が漏れていた。
先程までの威勢のいい美桜の姿はそこにはない、あるのは死という絶望に身体を支配されたか弱い一人の少女の姿だけ。
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