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同時に恐ろしい程の速さで身をかがめると、そこから繰り出す閃光のような司郎の左掌底。
しかし、掌底は男にではなく、美桜の真正面から心臓付近に放たれたのだ。
「きゃあっ!? えっ……?」
突然の事に小さく悲鳴を上げる美桜、しかし掌は美桜に直撃する瞬間、寸前で胸に軽く触れる程度で止まった。
呆気に取られていた男が、我に気付いたようにはっとする。
握っていたナイフに力を込め、殺意の衝動と共に美桜の背中から心臓を突き上げた、はずだった、
男の意思とは反対に、手が動かない。
正確には肘から下が痺れるようにまったく動かない。
そして突如、
ビシッ、という鈍くひび割れるような音。
信じられない事に、男が握っていたナイフにひびが入り、音を立てて砕け散ってしまったのである。
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