1095人が本棚に入れています
本棚に追加
電光石火とはまさしくこの事か。
司郎の手が、いつの間にか男の左腕を掴んでいた。
すると突然、男の体が力を失ったかのようにガクン、と崩れ落ちる。
柔らでいう崩しの一種。
力場を失い力なく倒れかけた男の目の前で、旋風が吹き荒れた。
次の瞬間、男の天地は逆転していたのである。
轟音を立てながら、男の背中がコンクリートの地面へ、が、
コツン、と地面に触れる音。 だが無論頭から落ちた音ではない。
靴だ。 男の履いていた靴の踵が地面に触れていた。
司郎は男の上腕を掴む事により、頭からの直撃を防いで見せたのだ。
しかも茫然とする男に対して、
「もういじめちゃダメですよ?」
と、あどけない明快な声で一言。 これもまた司郎らしい。
最初のコメントを投稿しよう!