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わざと食らったにしては、今回は泡まで吹いている。
おそらく今頃お花畑で誰かに手招きされている所か。
「むう……さすがに今のはまずいな。 おーい、帰ってこーい司郎ー?」
「うわぁぁぁ!! 司郎君ごめん! つい!」
と、慌てて謝る忍だが、ついラリアットをする女子高生は、全国探してもなかなかにいないだろう。
幸薄な青年の儚い命は、こうやって縮まってゆくのだろうか。
「やれやれ、これくらいで気絶してしまうとは、まだまだ修業が足りん証拠だな」
そう言って澪は腕を組み、首を横に振る。
「鬼かお前は……」
と言いながら制服を着直す忍、どっちもどっちである。
「まいったな、あの事を司郎に話すつもりだったのに」
それを聞いて忍がやや驚いた様子で澪に振り返った。
「えっ? あの事って、まさか全校集会で発表するやつの事か? ってまだ司郎君に話してなかったのかよ」
忍はやや呆れ顔で澪を見た。
すると澪は、その場でしばらく腕を組んだまま、んーっ、と何度か小さく唸った後に、
「ま、いっか、後のお楽しみってことで、」
そう言ってケロッとした顔で忍に笑って見せた。
それを見て忍は深く溜め息を吐きながら呟く。
「司郎君、驚くだろうな……」
そんな二人をよそに、未だ三途の川一歩手前で立ち止まったままの司郎、時は一刻一刻過ぎていき、やがて何やら波乱を含んだ全校集会が、今始まろうとしていた。
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