19人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
金だけを抜き取られた哀れな財布は道の端に打ち捨てられた。
こうしてジャックは日々の糧を稼いでいるのである。
社会の底辺。それは自覚している。
それでも枯れたわけではない。彼にも夢はあった。
「芸術爆発」と呼ばれた時代があった。
様々な分野で多くの天才が世に姿を表し、その才能を奮った。
多くの価値が創られ、創造者たちは富と名声を得た。
創造によって、大いなる価値観の転換が起きたのである。
その「芸術爆発」から200年。
力を握るのはもはや創造者ではなかった。
溢れた価値が暴落し、社会を混沌に陥れたのだ。
巷には贋作も溢れ、治安も悪化した。
その大きな渦の中で力を得たのが、「眼」と「手」、すなわち「真贋を見分ける能力」と「それを手に入れうる行動力」を持つ者。
すなわち「怪盗」であった。
ジャックもまた、いつか世界一の美術館から世界一の品を盗み出してやると夢見ていたのである。
最初のコメントを投稿しよう!