プロローグ

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「はぁはぁ…」 石で作られた薄暗い通路を、少女は走る。 服は破け、体中に傷を負いながら、それでも必死に走っている。 何処まで走っても、光が射す事は無く、まるで、出口の無い迷路をさ迷っている様だった。 裸足で走る少女の足は、何時しかボロボロに傷付き、いくつも肉刺が破裂し、血まみれになっていた。 「はっはっ!あっ!」 その痛みに耐えきれず、足は縺れ、少女はその場に倒れ込んだ。 全身に力を振り絞り、立ち上がろうとする少女だが、もう殆ど力は残ってはいない。 少女は、冷たい通路の上に伏せた。 すると、少女の走ってきた通路の向こうから、何人かの人間の足音が近付いてきた。 「こっちだ!この先に逃げたぞ!」 足音からして、向かってくるのは、五人、いや、十人以上は居るであろう。 「くっ…」 少女は立ち上がった。 走る力など残ってはいない。 それでも、僅かしかない力を振り絞り、必死に歩き始める。 「ここで、捕まる訳にはいかないのよ。」 少女の目は、まだ輝きを失ってはいなかった。 体は傷付き、絶望のただ中にあっても、その瞳は、輝きを失う事は無かった。
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